NOVARCAでは、2021年9月に「見えない中国市場を「見える化」 データ分析による課題解決実践法!」と題したオンラインセミナーを開催。佳麗宝化粧品(中国)有限公司(カネボウ中国) 董事 事業統括本部統括本部長 兼)花王中国投資公司 化粧品事業部市場本部長の宮下和也様(以下、敬称略)に登壇いただき、中国マーケティングにおけるデータの活用法についてお話しいただきました。
本ページでは、セミナー内容の一部に加えて、宮下様からいただいたNOVARCAの分析ソリューションへの評価について掲載しております。
課題・目的
- さまざまなデータが山積する中国市場において、マーケティング活用に適したデータの扱い方・分析方法を見出し、消費者インサイトの深い理解につなげたい。
- SNSデータから、自社ならびに競合ブランドに対する消費者の“生の声”をすくい上げて考察することで、自社の事業活動が消費者に対して想定通りに伝わっているか、検証したい。
結果
- SNS分析を通じて、自社ブランドの購買要因において、ブランド側の狙いとは異なる消費者の思考履歴が見つかったり、中国の生活慣習にもとづいた想定外の使用シーンを発見し、その背景事情含めた理解につながるなど、今後のマーケティング戦略策定の参考となる知見が得られた。
データ量は豊富な中国市場。一方、市場を俯瞰する「質的データ」には課題あり
濱野 日本市場とは異なる中国市場のデータセットについて、宮下様が中国で実践されている内容も含めて、お話しいただけますでしょうか。
宮下 私は2020年の春、初めて中国に赴任しました。赴任前から「中国はいろんな分野のデジタルシフトが一気に進んでいて、データ量が非常に豊富だから、マーケティングやる上では、宝の山だよ」といったことを聞いていました。確かにデータは本当に豊富で、怖いくらいいろんなものがつながっていることを実感しました。ただ、実際に仕事の中で、データを使いこなそうとした場合、データ量は非常に豊富なものの、それぞれのプラットフォームの内側で閉じちゃってるといいますか、それらを俯瞰できるようなデータというのは無いんですね。「化粧品市場って、はたしてどのぐらいの規模があるのか」、「それぞれのチャネルでどのぐらい規模やシェアがあるのか」といった、自社のポジショニングを確認したい際に活用できるデータという点では、まだ欠けていると感じています。
濱野 確かに、個別のデータは出てくるんですが、全体像を網羅したデータにはなかなかお目にかかれませんよね。化粧品市場に関するデータは特に幅が広いです。
宮下 はい、中国市場というのは非常に範囲が広いです。化粧品で例えれば、中国国内の事業と越境事業、トラベルリテール(免税事業)が絡み合って市場形成されています。ところが、それぞれの市場全体を俯瞰して把握できるデータというのが意外にも存在せず、未整備になっています。ですので、弊社では自分たちなりに発想して、既存のデータを組み合わせながら推計していくというようなことをしています。
濱野 やはり地道なデータ収集というか思考を積み上げて市場把握をされているんですね。
宮下 そうですね。「質的」なアプローチとしては、やはり SNS でどのように自分たちのブランドが話題になっているか等を解析しています。ただWeiboや小紅書(RED)などチャネルは複数あるのですが、それを統合的に、且つタイムリーに分析できる環境がまだ整っていませんでした。その部分を現在、NOVARCAさんの協力で、毎月1回、前月のブランドに対する話題を、量的および質的観点からすべて洗い出し、そこの背景にある「なぜこのように反応するのか?」、「なぜこの言葉が急に出てきたのだろう?」といった疑問を、弊社の中国市場担当部門メンバーと日本本社のメンバーも一部加わって議論しています。そうすることでかなりお互いの理解も深まりますし、それで想像をめぐらすことが大事ではないかと考えています。
データの「なぜ」を突き詰めることで、見える中国市場・消費者理解
濱野 私も皆様とお仕事をしていると、ドリルダウンを繰り返して「本当に消費者はそう思っているのか?」、「なんでそう思っているのか?」という定性的なアプローチを突き詰めているように思います。「あ、そうなんだ」で終わらないところが、こちらも本当にいつも勉強させていただいているポイントです。また私が特に興味深く感じたこととして、「データ分析のレポートは、一人で読むものじゃない」という考えで実施されている取り組みがあったかと思いますが、事例を少しご紹介いただけますでしょうか。
宮下 現在NOVARCAさんと共同で行なわせていただいている分析もそうですね。分析から出てくる言葉(キーワード)の意味が分からないといけないです。ただそれはここで生活して、ここで生きてきた人間からしてみたら「(その場合であれば、)至極当然、その言葉が出てくる」、「腑に落ちた言葉である」といったことも結構あります。逆にそれを会話のテーマに上げることで、「本質的に何がその背後にあるのか?」ということを解釈・理解することができます。さらには、今の現象としてこういう言葉が出てきたものの、我々が行きたい方向が別にあった場合、「どういう風にその方向に向かっていけばいいのか?」なども話し合うことができます。例えば「UV(日焼け止め)」の話をしていた時に、中国では「軍事訓練」というキーワードが必ず出てくるんです。知らないと「なぜそこで軍事訓練なの?」という話になりますが、コミュニケーションをしていくと、中国独自の習慣として中学生ぐらいから軍事訓練に行く機会があるんです。そこで初めて UV の使用を検討し、自分の目で商品やブランドに触れて選ぶシチュエーションができる。こういったことを気づくきっかけにもなるし、それを膨らませて、具体的な施策の内容に言及したり、発展したりといったことはよくあります。
思い込みを捨てて素直にデータと向き合う。その先に消費者のインサイトが見える
濱野 宮下さんの凄い部分は、その市場の解像度を上げにいくことに対して、飽くなき探求心をもっていて、それをマーケティング戦略に転換させるところかと思います。また、宮下さんの言葉として印象に残っていたのが「分析が目的じゃないからね」ということ。現場の方々にも結構仰っていましたよね。ちなみに、データ分析によって明らかになったこと、あるいは戦略転換をどのようなケーススタディで実施したのか?といったことを、教えていただける範囲で構いませんので、ぜひご紹介いただければと思います。
宮下 そうですね…、こちらで「フリープラス」であるとか、「キュレル」というマスブランドを展開していますが、そのポテンシャルを見に行く際、例えば「これらは敏感肌系のブランドである」という固定概念にとらわれていたことでしょうか。自分たちでそのコアを決めるのは構わないんですが、「お客さんはなんで買ってくれているのか?」、例えば「コスパがいい」や「クリーンだから」が理由であるとか、「敏感肌系のブランドだから」とは異なる理由で買ってくれているユーザーが実は結構な量いたりする。データ分析をすることで、事実として「お客さん側からみたら、こういう感じのブランドなんだ」ということに気づくことができました。今後の戦略としては、当然コアを変えるわけではないんですけれども、ユーザーの広がりを作っていく上では、そこは「良い意味での割り切り」と言いますか、「こういうのもまたお客様にとっての今の我々の価値である」ことに気づけたというのは良かったと感じています。あまり“言葉のマジック”に自分ではまってしまうと、思考回路が狭くなってしまうので気を付けるようにはしていますね。
濱野 敏感肌ブランドとして中国の洗顔カテゴリーではNo.1ですよね。今中国でカテゴリーNo.1を取れるブランドを持っている会社も少ないと思っています。宮下さんが仰った“言葉のマジック”という部分。「我々は敏感肌ブランドだ」と思っている。でも「本当に消費者は“敏感肌ブランド”で買っているのか?」といった思考というのは、非常に大事なのではないかと思います。
NOVARCAの分析ソリューションの導入背景についてお聞かせください。
中国市場ではデータは豊富に存在しますが、SNS上のお客様の声を確認する手段については取り入れていませんでした。そこで、チームで新たなマーケティングアイディアを発想したり、お客様からの反響・反応を活用して改善活動を洗練させていくために、NOVARCA社の分析ソリューションを導入しました。SNS上での自社や他社の声の量的・質的分析に重宝しています。
NOVARCAの分析ソリューションで得られた点・良かった点をお聞かせください。
自社の活動が想定した通りに社会の声になっているのか、どのように反応しているのかをきれいに仕分けして分析してくれるので、ブランド側の発信情報と消費者の反応が相対的に可視化できることが便利であり、消費者の反応をチームメンバーで考察していける点が導入してよかったと感じている点です。
トレンドExpressの分析ソリューションが他社と異なる点についてお聞かせください。
実際のリアルな声の原文を分析してくれたり、アカウント自体がどのような人物像なのかがわかることや、分析結果の深堀りや詳細のインサイト背景を提示してくれる点です。
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